あと10センチで出逢えるかもしれない-映画『骨を掘る男』あと10センチで出逢えるかもしれない-映画『骨を掘る男』

6/15(土)[東京]ポレポレ東中野、6/22(土)[沖縄]桜坂劇場 ほか全国順次公開
監督・撮影・編集:奥間勝也
整音:川上拓也 カラリスト:田巻源太 音楽:吉濱翔
共同製作:ムーリンプロダクション、Dynamo Production 製作:カムトト 配給:東風
2024|日本・フランス|115分|5.1ch|DCP|ドキュメンタリー
(C) Okuma Katsuya, Moolin Production, Dynamo Production
お問合せ:info@tongpoo-films.jp
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イントロダクション

それでも掘りつづけることを彼は「行動的慰霊」だと言う

沖縄戦の戦没者の遺骨を40年以上にわたり収集し続けてきた具志堅隆松。これまでに、およそ400柱を探し出した。彼は自らを“ガマフヤー”と呼ぶ。ガマは沖縄の自然壕、フヤーとは掘る人という意味だ。砕けて散乱した小さな骨、茶碗のひとかけら、手榴弾の破片、火炎放射の跡…。拾い集めた断片から、兵隊か民間人か、どのような最期をとげたか推察し、想いを馳せ、弔う。掘ってみるまで、そこに本当に骨が埋まっているかどうかはわからない——それでも掘りつづける行為を具志堅は、観念的な慰霊ではなく「行動的慰霊」だと言う。
沖縄本島には激戦地だった南部を中心に、今も3000柱近くの遺骨が眠っているとされる。沖縄の人びとや旧日本軍兵士のものだけではない。米軍兵士、朝鮮半島や台湾出身者たちの骨を含んだ島の土砂が辺野古新基地のための埋め立て工事に使われようとしている。

出逢ったことのない人の死を悼むことができるのか?新進気鋭の映画作家が生まれ育った沖縄の歴史と今を見つめる

監督の奥間勝也もまた沖縄戦で大叔母を亡くした戦没者遺族である。しかし、生まれるはるか以前に亡くなった大叔母とは会ったことがない。具志堅の遺骨収集に同行し、沖縄戦の膨大なアーカイブ映像に目を凝らし、大叔母の生きた痕跡を探す奥間は、繰り返しこう自問する。「出逢ったことのない人の死を悼むことはできるのか?」 その問いはやがて「平和の礎」に刻銘された24万の名を読み上げるいくつもの〈声〉と共鳴し、戦火と分断の時代を生きる私たちを震わせる。
どうすれば遠く離れた人の痛みとともにあることができるのか? 新進気鋭の映画作家が生まれ育った沖縄の歴史と今を見つめた次なる世代のドキュメンタリー。

監督メッセージ

具志堅さんはひとりで黙々と土を掘っている。最初はそう思っていた。しかし、どうやらそれは違ったようだ。具志堅さんは、まるで自分が誰かに見られているような感じで掘っていることに気づいた。
沖縄で遺骨収集を続けていれば、何回かに一回は遺骨が出てくる。掘り出した骨を見ながら具志堅さんといくつか言葉を交わすと、やがて、無言で骨を見つめる時間がやってくる。しかし骨は何も語ってはくれない。見続けていると、見ている私たちを骨が見返してくるように感じるときがある。「あぁ、これか」と思った。
だから具志堅さんは自分がとるべき行動をとり続けるのだし、私はこの映画を作りきったのだろう。どうかあなたにも見てほしい。

奥間勝也

コメント

順不同/敬称略
  • 具志堅さんは、湿った土の中から
    残された遺骨を、遺留品を、素手で掘り出してゆく
    この人は兵隊、この人はおじいさん
    こっちはお母さんで、こっちは幼い子ども
    土色に染まった骨のかけらをくっつけるようにして
    ひとりひとりの輪郭を浮かび上がらせてゆく

    そして、これは、わたしの想い及ばない人のために
    名前も遺骨も残せなかった人たちのこともまた
    同じように悼む

    瀬尾夏美(アーティスト、詩人)

  • 具志堅隆松さんという稀有な人物を導き手に、「失われた時」を探求する記念すべき傑作。遺骨と遺影をめぐる深い思索の末、まだ映像にどんな力が残されているかが触知される。本作を見た後は、沖縄の大地の見え方が決定的に変わってしまうだろう。

    三浦哲哉(映画研究者)

  • 砂利とも人間ともつかない土をあてもなく掘り続ける、終わりなき追悼の作業。

    暗闇の中、ささやくように骨に語りかけながら冷たい沈黙をすくい上げるガマフヤーの姿に畏怖の念を抱いた。

    生きても死しても踏みつけられるのが弱者の定めなのか。そんな条理が認められていいはずない。

    キニマンス塚本ニキ(翻訳者・ラジオパーソナリティ)

  • ベルが鳴り、暗転した瞬間、劇場がガマになる。あの湿気を含んだ土の匂い。汗ばむ澱んだ空気。ひんやりした地面の感触。掬い上げられる日を待ち焦がれていた死者たちの時間が、スクリーンから沁み出してくる。
    「ああ、ようやく見つけてくれましたね」
    「ここに娘も居るんです。どうぞ名前を呼んでやってください」
    具志堅さんのアンテナに同期し、観客も聞こえないはずの声を聞き、見えないはずのものを共に凝視する体験。これは映画館でしか起きない魔法だと思う。

    三上智恵(映画監督、ジャーナリスト)

  • ガマに埋もれたままの骨は「国」に見捨てられて、80年近く地中深く眠る。その骨を40年以上堀り続ける。その「行動的慰霊」行為を5年間撮り続ける。まだ骨が埋もれている土は、米軍新基地建設の埋立工事に使われる。
    過去・現在・未来の多層な時間も「埋め込まれ」たこの映画は、だから、「埋められて」見えない骨と時間の意味を問う。

    太田昌国(民族問題研究家)

  • 覆い被さった土を避けながら「ちょっと待ってね」と遺骨に声をかけ、戦没者の尊厳のためなら住宅地や県庁前で迷いなくメガホンを構える具志堅さん。返事があるかわからない相手にそれでも語りかける途方もない繰り返しが、歴史の重い岩を少しずつズラしていく。奥間監督の撮りためた記録は、未来の重要な証言になるだろう。

    井戸沼紀美(肌蹴る光線)

  • 地底の闇に散らばる欠片のひとつひとつを手に包み、繋ぎ合わせ、土塊に焼きつくその姿を具志堅さんの声が浮かびあがらせる。
    口伝えの間に映画という身体を挟ませ、その闇と響きが消え失せないように、映画は地上に向かって私たちに向かって投影してくる。
    私たちの瞼の裏の闇と地底が繋がり、暗闇で待つ人々と私たちが隣り合わせで生きていることを教えてくれる。

    山城知佳子(映像作家)

  • どのカットのどのディテイルも、どの言葉も、どの編集の機微も、すべてがゆるがせにできない尊厳をたたえている。
    たしきてぃくみそーれー。助けてください。シーンを追う私の眼は、洞窟の中のガマフヤーのそれになる。死者とともにあるのでなければ、私たちは品位を保ちえないのだ。冒頭からエンドロールまで、涙が流れ止まない。こんなドキュメンタリーを、私は知らない。

    池田香代子(翻訳家)

  • 沖縄戦での遺骨混じりの土砂を海に投げ入れてまでして、巨大な軍事基地をつくろうとしている〈奴ら〉がいる。
    その軍事基地が再び戦死者の遺骨を生み出す。民間人、軍人を問わず。戦死者の遺骨の無限再生産。
    言っておくが、他のどの土地の土砂を使おうとも、戦死者を生み出すことには変わりはない。
    ガマフヤーの具志堅さんの渾身の手作業は、着実に〈奴ら〉の足元を突き崩している。

    金平茂紀(ジャーナリスト)

プロフィール

  • 具志堅隆松(ぐしけん・たかまつ)
    出演

    具志堅隆松
    (ぐしけん・たかまつ)

    沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」代表。
    1954年、沖縄県那覇市生まれ。82年、ボーイスカウトの成人リーダーとして糸満市と具志頭村(現・八重瀬町)の境の原野での遺骨収集に携わって以来、活動を続ける。年に1度行われる本土の遺骨収集団の行事に参加していたが、出土する遺骨が年々劣化していることに気づき、個人での収集を始める。83年、真嘉比で市民参加型の遺骨収集を呼びかけたことを機に「ガマフヤー」を設立。これまで探し出した遺骨はおよそ400柱。遺骨を戦没者遺族のもとへ帰すためDNA型鑑定にかけることを厚生労働省に要請し、2011年にこれが認められ、沖縄戦戦没者の身元特定の道をひらいた。2011年度、吉川英治文化賞受賞。「県民の手による不発弾の最終処分を考える会」代表、「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」共同代表も務める。

  • 奥間勝也(おくま・かつや)
    監督

    奥間勝也
    (おくま・かつや)

    1984年沖縄県生まれ。映像作家。琉球大学大学院修士課程で文学を学んだ後に上京。沖縄を舞台に制作した中編映画『ギフト』(11)がニヨン国際ドキュメンタリー映画祭(Visions du Reel:スイス)や山形国際ドキュメンタリー映画祭など国内外で上映される。北インド・ラダック地方で撮影した『ラダック それぞれの物語』(15)は山形国際ドキュメンタリー映画祭アジア千波万波部門で奨励賞を受賞。WOWOW「いま甦る幻の映画『ひろしま』〜受け継がれていく映画人の想い〜」(15)では全日本テレビ番組製作社連盟ATP賞最優秀新人賞を受賞した。

  • 整音・録音協力

    川上拓也
    (かわかみ・たくや)

    映画美学校ドキュメンタリーコース修了後、フリーの録音・編集として活動。録音担当作に『風の波紋』(15/小林茂)、『マイ・ラブ:日本篇 絹子と春平』(21/戸田ひかる)、『百年と希望』(22/西原孝至)、『重力の光:祈りの記録篇』(22/石原海)、『はだかのゆめ』(22/甫木元空)、『きのう生まれたわけじゃない』(23/福間健二)など。整音担当作に『息の跡』(16/小森はるか)、『帆花』(21/國友勇吾)、『日本原 牛と人の大地』(22/黒部俊介)、『二十歳の息子』(22/島田隆一)など。編集担当作に『台湾萬歳』(17/酒井充子)、『Ryuichi Sakamoto | Opus』(23/空音央)などがある。

  • 音楽

    吉濱翔
    (よしはま・しょう)

    1985年沖縄生まれ。美術作家、サウンド・アーティスト。2010年、沖縄県立芸術大学絵画専攻卒業。音を素材としたインスタレーション/パフォーマンスなどの制作、フィールドレコーディング、カセットテープや日用品などを使った即興演奏など、美術と音楽の間にある表現を行う。12年にトーキョー・エクスペリメンタル・フェスティバルにて奨励賞。17年にポーラ美術振興財団在外研修員として即興音楽のリサーチのためイギリスに滞在。23年、きょうと視覚文化振興財団の支援を受け個展開催。同年、リスニング・ビエンナーレ・マニラ2023(フィリピン)にて作品を発表。映画では、『オキナワより愛を込めて』(22/砂入博史)に音楽とサウンドエフェクトとして参加。

劇場情報

6/15(土)[東京]ポレポレ東中野、6/22(土)[沖縄]桜坂劇場 ほか全国順次公開6/15(土)[東京]ポレポレ東中野、6/22(土)[沖縄]桜坂劇場 ほか全国順次公開
全国共通特別鑑賞券
1400円(税込)発売中
(オンライン座席予約には
使用できません)
2024年5月23日現在

劇場イベント情報


北海道・東北

地域 劇場 電話番号 公開日
宮城県仙台市 フォーラム仙台 022-728-7866 8月2日(金)~8月8日(木)
備考
山形県山形市 フォーラム山形 023-632-3220 近日公開
備考
福島県福島市 フォーラム福島 024-533-1515 8月2日(金)~8月8日(木)
備考

関東

地域 劇場 電話番号 公開日
東京都中野区 ポレポレ東中野 03-3371-0088 6月15日(土)~
備考
神奈川県横浜市 横浜 シネマ・ジャック&ベティ 045-243-9800 7月6日(土)〜
備考
神奈川県厚木市 あつぎのえいがかんkiki 046-240-0600 6月21日(金)~
備考

中部

地域 劇場 電話番号 公開日
愛知県名古屋市 ナゴヤキネマ・ノイ 052-734-7467 近日公開
備考
長野県長野市 長野相生座・ロキシー 026-232-3016 6月21日(金)~7月4日(木)
備考
静岡県静岡市 静岡シネ・ギャラリー 054-250-0283 近日公開
備考
富山県富山市 ほとり座 076-422-0821 近日公開
備考

近畿

地域 劇場 電話番号 公開日
大阪府大阪市 第七藝術劇場 06-6302-2073 6月15日(土)~
備考
京都府京都市 京都シネマ 075-353-4723 6月15日(土)~
備考
兵庫県神戸市 元町映画館 078-366-2636 近日公開
備考

中国・四国

地域 劇場 電話番号 公開日
広島県広島市 横川シネマ 082-231-1001 8月10日(土)~8月23日(金)
備考
愛媛県松山市 シネマルナティック 089-933-9240 近日公開
*火曜休館
備考
香川県高松市 ソレイユ・2 087-861-3302 8月2日(金)~8月8日(木)
備考

九州・沖縄

地域 劇場 電話番号 公開日
福岡県福岡市 KBCシネマ1・2 092-751-4268 近日公開
備考
熊本県熊本市 Denkikan 096-352-2121 近日公開
備考
大分県大分市 シネマ5 097-536-4512 6月22日(土)〜
備考
宮崎県宮崎市 宮崎キネマ館 0985-28-1162 8月9日(金)~8月22日(木)
備考
鹿児島県鹿児島市 ガーデンズシネマ 099-222-8746 6月27日(木)〜6月29日(土)
備考
沖縄県那覇市 桜坂劇場 098-860-9555 6月22日(土)~
備考
沖縄県宮古島市 よしもと南の島パニパニシネマ 0980-75-3215 6月22日(土)~
備考